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さんけいにいくるひとびと
山谿に生くる人々
葉山 嘉樹
――生きる為に――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页
。
そこで、おやじは嬶をオッ抛り出して、汽車で、別な工事場へ出かけたのである。ところが、うちでへべれけになってひっくりかえってるはずの嬶が、へべれけではあるが、発車間際に停車場にかけつけ、亭主と同じ列車に飛び乗ったのだ。そして、亭主のシートの前に立ったまま、胸倉を掴まえて、
「嬶を忘れる奴があるか」
と言うと、亭主は頭を掻きながら、
「せっかく忘れて来たのになあ」
と言った。というのである。
こういう話は、さまで珍らしい事件ではないのだ。これが、お睦の場合であったならば、喜んで「忘れられた」かもしれないのだ。
そのお睦も、とうとう暇を取って、どこかへ行った。「またちょいちょい遊びに来ますから」なんかと言って、行ったところをみると、どこか近くの辺に、彼女らしい「穴」でも見つけたのであろう。
こういった風な女は、生活に後を残さないで、きれいさっぱりと、身を翻して行く。
が、そこへ行くと大山だの、小林だのの、世帯持ちは、生活の両側に紐がついていて、それが首に捲きついているのであった。無理に、処置をつけようなどと考えると、その紐が締まるのである。
だが、今、工事は進めている。