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さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

――生きる為に――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页

青空文庫

こういう次第で、この谿谷の川面に近い、街道筋では各々様々の色をした白色レグホンが、餌を拾っているのが見受けられるのである。

「これを見て下さい。まるっきり滴も出ないでしょう。これじゃどうにも悲しくて」

と、緑屋のおかみは「悲し」がるのである。

なるほど、上の沢から地に埋めて、長々と引かれた、筧の先からは、水は一滴も出ていなかった。水溜めの木桶にも、使い残りの水がごくわずかしか残っていなかった。水桶の下には二坪余りの池があって、水が黒く濁って、鯉が鈍く動いていた。

「それに、こんな風だと、今日中は鯉が持たないんですよ。こんな山の中ですから、鯉でも活かしておかなきゃ、活きたお魚なんて、外のものは手に入りませんからね。これでも十五六貫匁入れてあるんですよ。困っちまいますよ。外のものなら、何とか都合もつけますけれど、水だけはねえ。命の水っていう位でしょう。ほんとに悲しくて」

「どうも、天龍川のすぐ側に住んでて、水に不自由するって法はないですね。だけど、こんな渇水って珍らしいんじゃないですか。寒中よりも涸れてるんですものね。井戸は掘っても駄目なんですか」

と大山が、気の毒になって、都合によったら、井戸でも掘ってやらねばなるまいか、と考えながら言った。