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さんけいにいくるひとびと
山谿に生くる人々
葉山 嘉樹
――生きる為に――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,699 字 · 67 页
それから大山は、緑屋の方へ飛んで行き、そこへ帰っていたおかみに、
「助かりました。大丈夫でした。御心配をかけました。何しろ無事で幸いでした」
と言った。
緑屋の前から、樹立を透して見ると、今まではずっと上の方にあった、山の臓腑が、真上に覗き込んだように、近々と白く眼に泌みるのだった。
緑屋の人たちも、その前の会社員の家族の人たちも、街路に立って、「山が歩み寄る」という事が、予想よりも大きな事実だったのに、今更驚いているのだった。
「おそろしかったですわね」
「どうなることかと思いましたわ」
とか、女の人たちは、小さな声で囁やき合っていた。大きな声を立てると、思い直して山がもう一度来はしないか、とでもいうように。
大山は、兎のように山に駆け登った。
小林も、その山をついさっきまで、鑿で穴を穿ったり、バール(テコ)で起こしたり、鶴嘴で起こしたりしていた、坑夫たちも、まるで造りつけられたように、いろいろな恰好で、じっと見詰め、もの思いに耽っているように見えた。
まったく、それは無数の物思いであった。一つ事のつづまりがつかないのに、もう次の考えが頭を出し、次々、次々に無数の考えが、山に関してだの、生活に関してだの、突拍子もない聯想だの、星雲みたいな状態であった。