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しまもり

島守

中 勘助

「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页

青空文庫

肩をすぼめて森に吠える雪風の声をきいている。

夜半。思いがけぬ月の光がこうこうとさしこんだ。怪鴟の声、波の音。

十一日

朝。小雨のなかを本陣が菜と雉笛と大笊に一杯のしめじをもってきてくれた。本陣はくるたんびになにかしら山里らしい話を積んでくる。しめじはこのへんでいちばんいい茸だということ、なに茸とかいって傘の径が一尺もある気味の悪いのもたべるということなど。

ゆうべのうちに山へ雪がきた。妙高に三度ふれば里にもくるといういいつたえで村は今草刈りのおわり、とり入れのはじまりで大騒ぎだ という。十二日の秋祭――祭とは名ばかりでこれということもない。――までに草を刈りおえ、新そばをたべ、収穫をはじめて霜月のなかばまでに凡ての農事をしまい、それから人びとは身も心ものびのびとして思いおもいの温泉へゆく。

桟橋へ出る。山やまは寒そうな雲に埋もれて雪の色さえみえない。風に吹きさかれた霧のきれが目のまえの水のうえをそそとせせってゆく。

木立ちの路を帰れば凍えた島のなかにあとりが鳴き、めじろもなく。

この住居のまえにある僅ばかりの平地のむこうは五、六丈? の急な崖になってその下が南の浜である。