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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
私は 都会に生れて都会に飽きたからこんなところに籠ったのだ といいかげんな返事をした。お爺さんはぱくりと口をあいてまわりの森や屋根裏を見まわしてたが
「やはり夜になればお話においでのこともごわしょうな」
と変なことをいいだした。私がわかりかねた様子をしたもので
「いや昔からこういうところではてんご様や神様がきてお話しくださるということを承っておりますで」
という。私がまじめに
「もうこのせつではあまりそういうことはありません」
といったら感にたえぬらしく仰山にうなずいて
「天子様がおとめになりますかな」
といった。そうして孔のあくほどひとの顔を見たあげく
「どうも御失礼申しあげました」
と丁寧におじぎをして帰っていった。小さいとききいた伯母さんの話によると天狗様はおりおりこんなことをして人を嬲りにくるという。まずはお気にさわるようなこともいわないでよかったと思う。
きょうもしぐれてきた。雲のように繁り合った大杉の梢にしらしらと雨脚がみえる。
夕飯の菜に鱒をやき、里芋と玉菜を煮る。
十六日
朝あさ島を出てゆく鳥の声によびさまされる。眼をあいたらぱちぱちと葉をうつ雫の音がした。