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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
木蓋のうえで葱をきって一つ一つ石を投げるように投げ込む。涙がはらはらとこぼれかかる。こんなに涙が出るのはもう死んだのではないかと思う。死ぬときどんなにか皆にあいたかったろうと思う。焚きつけがなくなった。晩飯のために拾わねばならぬ。
後ろの森の杉の枯葉をひろう。ひとつずつ拾って左手にためる。涙がでる。かけすぐらいの鳥がゲーゲーと争っている。
なにをするともなく夕がたになった。きょうは夜になるのが寂しい。その夜の闇のなかにひとつぶの昼の光をとめておくような気もちで島の脊を燈明をともしにゆく。落葉の音や木立ちにひびく自分の足音をききながら石段をおり燈明をともしてなにということもなく眺めている。燈明の影が水にうつる。その水底に幾年となく落ちかさなった枝、そのうえを小さな魚の子のゆくのが透いてみえる。彼らはまことに天から生みおとされたかのように処を得がおである。きょうは曇。飯綱にも黒姫にも炭焼の煙がたつ。煙が裾曳くのは山颪であろう。
二十五日
朝目をさますと同時に妹を思った。きょうの悲しい最初の思いである。□□子はまだ生きてるような気がする。そして私のように今目がさめたのだろうと思う。