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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
お供物のおかげで一晩静かだったが見れば餅はきれいに運び去られている。
二十七日
□□子の具合がいいという知らせがきてきのうは幸福な日だった。けさ南の浜へおりてたらいつのまにかきた本陣が
「先生 先生」
とよんだ。私が二足三足坂をあがりかけたら
「はがきがまいりました。たいそういいってんです」
といった。本陣はこのごろ私が気分がすぐれないのを気にかけてくるたんびに親切にたずねてくれる。また私が□□子のために心を痛めてるのにも深く同情してるのだ。
夕。桟橋に立ってるとき北の岡の峡から霧が吹き出してきたので今に島を包むかと思って眺めてたが徐かに湖をわたり東の山にそうていってしまった。秋になって霧が急にすくなくなった。燈明をつけてもどってみればもう鼠の音がしている。ゆうべは餅のかわりに一掴みの米を供えておいたら床につくまもなくぱちぱちと内証らしくたべる音がした。今夜ははぜもろこしをささげよう。
俄に雨の音。
二十八日
夜半。恐しい風の音に呼びさまされた。いま人びとはみな眠って私ひとり覚めてるのであろう。私はこの島の嵐のなかにただひとりなることを思い幸にみちて眠りに入った。