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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
丁度そのときガチャーンと大きな物音がして、硝子窓が壊れました。見ると門の方に面した大きい硝子窓には盥が入りそうな丸い大きい穴がポッカリと明いているのです。不思議にも硝子の破片は一向に飛んで来ません。別に何物も硝子窓にあたったように見えないのに、これは一体どうしたということでしょう。
次から次へ、不思議としか言うことの出来ない事件が起ったのです。私は気を失った兄を膝の上に抱き起したまま、老婦人が始めに呟き、それから又兄が今しがた叫んだ謎の言葉を口の中に繰りかえして見ました。
「崩れる影、崩れる鬼影!」
信じられない事件
月の明るい箱根の夜の出来事でした。空中をフワフワ飛んでゆく白衣の怪人が現れたかと思うと、間近くから救いを求める老婦人の金切声が起りました。救いに行った、私の兄の帆村荘六は、その洋館の一室で、足を天井につけ、身は宙ぶらりんに垂下っていました。ニュートンの万有引力の法則を無視したような芸当ですから私は驚きました。これは様子がおかしいと気がついて、やっと助け下ろしますと、「崩れる鬼影!」と不思議な言葉を呟いたまま人事不省に陥ってしまいました。