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くずれるおにかげ
崩れる鬼影
海野 十三
「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页
もし外の方が圧力が強いと窓硝子が壊れたときは、外から室内へ飛んでくる筈ですから室内に硝子の破片が一杯散乱していなければなりません。そういうことのないわけは、それが逆で、この室内の方が圧力が高かったわけです。
(室内の圧力が高いということは、どういう状態にあったのかしら?)
風船ではないのですから、この室内だけに特に圧力の高い瓦斯が充満していたとは考えられません。それに窓硝子の壊れる前に、私はこの室内へ入っていたのです。扉を破って入ったときに、室内に圧力の高い瓦斯と空気が充満していたものだったら、私は吃度強く吹きとばされた筈です。しかし一向そんな風もなく、普通の部屋へ入るのと同じ感じでありました。するとこの室内に高圧瓦斯が充満していたとは考えられません。
(すると、それは一体どうしたわけだろう)
こんな風に窓硝子が壊れるためには、もう一つの考え方があります。それは何か大きい物体を、この室から戸外へ抛げたとしますと、こんな大きな孔が出来るかも知れません。いつだか銀座のある時計屋の飾窓の硝子を悪漢が煉瓦で叩き破って、その中にあった二万円の金塊を盗んで行ったことがあります。