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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

「……」

私は無言のまま、すぐ向うの左手の扉を指しました。老婦人を囲んで、怪しげなる服装をつけた頭のない生物が、蜥蜴のように蠢めいているところを又見るのかと思うと、いやアな気持に襲われて参りました。

警部は首を上下に振って大きい決心を示しました。「懸れッ!」サッと警部の手が扉の方を指しました。

黒田巡査が最先に飛び出して、扉の把手に手をかけると、グッと押しました。

「オヤ、あかないぞ」

ウーンと力を入れて体当りをくらわせてみましたが、どうしたものかビクとも開かないのです。

「警部どの、これァ駄目です」

「扉を壊して入れッ。三人位でぶつかってみろ」

三人の逞しい警官が、たちまちその場に勢ぞろいをすると、一、二イ、三と声を合わせ、

「エエイッ」

と扉にぶつかりました。グワーンと音がするかと思いの外、呀ッと叫ぶ間もなく、扉はパタリと開き、三人の警官は勢いあまってコロコロと球でも転がすように、室内に転げ込みました。どうやら鍵は懸っていなかったものらしいのです。

一同は思いがけぬことに、ちょっとひるんで見えましたが、

「それ、捕縛しろッ」

と警部が激励したので、ワッと喚いて室内に躍りこみました。