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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

一体これは何者でしょうか。

鬼か、人か?

妖怪屋敷を照らす満月の光は、いよいよ青白くなって参りました。

異変の夜は、まだいくばくも過ぎていないのです。

続いて起ろうとする怪事件は、そも何か。

警官の紛失

「化物は何をしているんでしょ。ねエ警部さん」

と私は白木警部の腕を抑えて云いました。

「なんだか、ガタガタいってたのが、すこしも音がしなくなったようだネ」

そういって警部は、注意ぶかく頭をもちあげて、戸口の方を、見ました。月光は相変らず明るく硝子戸を照らしていましたが、先刻見えた怪しい鬼影は、まったく見当りません。唯空しく開いた入口の外は木立の影でもあるのか真暗で、まるで悪魔が口を開いて待っているような風にも見えました。

「さっき戸口がゴトゴト云ってたが、みな外へ逃げ出したのかも知れない」

警部の声を聞きつけたものか、あちらこちらから、部下の警官が匍いよってきました。

「警部どの。あれは一体人間なんですか」

「人間ですか。それとも人間でないのですか」

部下のそういう声は慄えを帯びていました。

「さア、私にはサッパリ見当がつかん」

警部も、今は匙を投げてしまいました。