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くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

「科学の日本」博文館、1933(昭和8)年7月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 页

青空文庫

足が天井にピタリとついた。不思議な気持だ。尚も叫んでいると、今度は頸がギュウと締まってきた。苦しい、呼吸が出来ない――と思っているうちに、気がボーッとしてきてなにが何だか、記憶が無くなってしまった。こんな不思議なことがまたとあろうか」

と兄は始めて、この博士の室で遭ったという危難について物語りました。

「眼に見えない生物が、兄さんに飛びかかったんだ」

「そうだ。そう考えるより仕方がない。僕はお医者さまが許して下されば、もっと検べたいことが沢山あるんだ……」

「そうですネ」と医者は時計を見ながら云いました。「大分元気がおよろしいようですが、では無理をしないように、すこしずつ動くことにして下さい」

「じゃ、もう起きてもいいのですネ」

兄は嬉しそうに身体を起しました。そして両腕を体操のときのように上にあげようとして、ア痛タタと叫びました。

二人連れの怪人

兄は元気になって、谷村博士の老夫人を見舞いました。

「まア、貴郎までとんだ目にお遭いなすってお気の毒なことです」

と老婦人は泪さえ浮べて云いました。

「おや、あれはどうしたのです」

兄は内扉の向うが、乱雑にとりちらかされてあるのを見て、老婦人に尋ねました。