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じゅんさじしょく

巡査辞職

夢野 久作

「新青年」1935(昭和10)年11~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,907 字 · 63 页

青空文庫

のみならず昨日の事です。その長男の手紙と同時に勧業銀行から破産宣告に関する通知が来ているのを私は見て参りました」

「フーム。してみると区長に嫌疑はかけられぬかな」

「ハイ。区長は絶対の無罪と信じます。少くとも区長と犯人との間柄は、赤の他人以上に無関係です」

「しかし君は、そうした犯人に関する意見を、何故に司法主任の馬酔君に話さなかったのですか。その方が正当の順序じゃないですか」

草川巡査はギクンとしたらしく言葉に詰まった。しかし、やがて冷い渋茶を一パイ飲むと、やはり持って生れた吶弁で、

「こんな事は今度の事件と全然、関係の無い、私の一身上のお話ですが……」

と恐縮しいしい自分が谷郷村に赴任した理由を詳しく話し出した。

「そんな理由で……私のような下級官吏の口から申上るのは僭越ですが、昔から田舎の都会に根を張っております政党関係の因縁の根強さは、到底、私どもの想像に及びません位で、それに……私は元来、極く田舎の貧乏寺の僧侶の子で御座いまして、父親の名跡を継ぐために、曹洞宗の大学を出るだけは出ました者ですが、現在の宗教界の裏面の腐敗堕落を見ますとイヤになってしまいまして、いっその事直接に実社会のために尽そうと考えて、檀家の人々が止めるのも聴かずに巡査を志願致しましたような偏屈者で御座いますから、そんな因縁の固まりみた