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こうがくはくしすえひろきょうじくん

工学博士末広恭二君

寺田 寅彦

「科学」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,788 字 · 12 页

青空文庫

ちなみに君は生涯髭を蓄えず頭も五分刈であった。着物などには一切構わず、時にはひどい靴をはいていた。住宅を建てた時でも色々な耐震的の工夫をして金目をかけたが、見かけの華美を求める心はなかったようである。

末広君の大学における講義にも特徴があったそうである。分量を少なく、出来るだけ簡易平明にして、しかも主要な急所を洩れなく、また実に適切な例を使って説明するという行き方であり、また如何なる教科書とも類を異にしたオリジナルなものであったという事は同君の講義を聞いた高弟達の異口同音の証言によって明らかである。

学会などにおけるディスカッション振りにも、やはり優れた頭脳と蘊蓄を示して、常に「最後の言葉」を話す人であったそうである。

学生の卒業論文などについても指導甚だ懇切であった。初めにはいきなり酷く叱られて慄え上がるが、教えを受けて引下がるときは皆嬉々として引下がったという話である。卒業後の就職などについても労を惜しまず面倒を見た。また、すべての人の長所を認識して適材を適処に導く事を誤まらなかった。晩年大学蹴球部の部長をつとめていたが、部の学生達は君を名づけて「オヤジ」