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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

14 猛火の中の私たち

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,717 字 · 8 页

青空文庫

その間隔はたった十人か十五人位の人垣によって押し隔てられているのですが、親も子の傍へ来ることが出来なければ、子も親の側へ寄って行くことも出来ない。心は矢竹にはやれどもわれ人ともに必死の場合とて、どうすることも出来ないのでした。

しかし、私たち親子の一心が通ったものか、とにかく、親子は犇と抱き合いました。

「もう大丈夫だ。俺が附いている」

こう父が確かりした声で、私を抱いていった時、私は、一生に、この時ほどうれしかったことはありません。私の父兼松は生粋の江戸ッ児で、身長こそは小さいが、火事なぞに掛けては、それはハシッコイ人物、……我子を両手に抱いたうれしさに勇気も百倍し、それから人波を押し割って元の道に引ッ返し、大神宮際の床店の所まで父は私の楯となって引き退いたのでありました。

其所で、父は、とある荷物の中から、一つの網戸を引っぱり出し、それを床店の屋根に掛けました。そうして、私の尻を押すようにして、私を屋根に上らせました(戸の桟を足場にして攀じ上る)。続いて父も屋根に上り、さらに網戸を大神宮の拝殿へ掛け渡して逃げ道を作りました。

「さあ、これで、もう、大丈夫だ。