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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
15 焼け跡の身惨なはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,277 字 · 3 页
た。それに苦しい上にも苦しかったことは、あの、「乾」の烟草屋の物置きに火が掛かると、ありたけの烟草が一どきに燃え出して、その咽ることは……焦熱地獄とはこんなものかと目鼻口から涙が出やした」
と、今は寒さに震えながら、下火に当っての物語、……茫々莫々たる焼け跡の真黒な世界は、師走の鉛色な空の下に無惨な状で投げ出されていました。
師匠の荷物は、この兄弟が川の中で扶けたものばかりと、手伝いの人が持って帰って、後に届けてくれたもの少々とが残ったほかには、何も残りませんでした。笑い事ではありませんが、前述の万年屋の前で、師匠が大事に背負って行った大風呂敷の包みは、諏訪町河岸にいた師匠の妹の夜具蒲団であったので「わざわざ本所まで背負って行ったものの、これは妹に返さねばならない」と、後で、師匠が苦笑しました。
ところが、また不思議なことには、私の道具箱が何処にどう潜んでいたか、そのままに助かった。それは、まだ子供のこととて、羊羹の折を道具箱にしたもので、切り出し、丸刀、鑿、物差などが這入っていた。これが助かったので、後に大変役に立ちました。
何しろ、今度の火事は変な火事で、蔵前の人々は、家が残って荷物が焼けました。