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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
19 上野戦争当時のことなど
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,952 字 · 10 页
広小路一帯は今日とは大分違い、袴腰がもっと三枚橋の方へ延び、黒門と袴腰の所が広々としていた。山下の方には、大きな店で雁鍋がある。この屋根の箱棟には雁が五羽漆喰細工で塗り上げてあり、立派なものでした(雁鍋の先代は上総の牛久から出て池の端で紫蘇飯をはじめて仕上げたもの)。隣りに天野という大きな水茶屋がある。甘泉堂(菓子屋)、五条の天神、今の達磨は元岡村(料理店)それから山下は、今の上野停車場と、その隣りの山ノ手線停留場と、その脇の坂本へ行く道が、元は、下寺の通用門で、その脇が一帯に大掃溜であった。その側は折れ曲がって左右とも床見世で、講釈場、芝居小屋などあった。この小屋に粂八なぞが出たものです。娘義太夫、おでんや、稲荷ずし、吹矢、小見世物が今の忠魂碑の建っている辺まで続いておりました。この辺をすべて山王下といったものです。
停車場の向う側は山下町、その先の御徒町の電車通りの角に慶雲寺がある。この寺は市川小団次の寺で法華宗です。山の上では今常磐花壇のある所は日吉山王の社で総彫り物総金の立派なお宮が建っていました。その前の崖の上が清水堂、左に鐘楼堂。法華堂、常行堂が左右にあって中央は通路を跨いで橋が掛かり、これを潜って中堂がありました。