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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
21 年季あけ前後のはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,912 字 · 6 页
それに附けていうことは、何よりも気を許してはならんということである。年季が明けたからといって、俺はもう一人前の彫刻師となったと思うてはいかぬ。今日まではまず彫刻一通りの順序を習い覚えたと思え。これからは古人の名作なり、また新しい今日の名人上手の人たちのものについて充分研究を致し、自分の思う所によっていろいろと工夫し、そうして自分の作をせねばならぬ。それにつけて、将来技術家として世に立つには少時も心を油断してはならぬ。油断は大敵で、油断をすれば退歩をする。また慢心してはならん。心が驕れば必ず技術は上達せぬ。反対に下がる。されば、心を締め気を許さず、謙って勉強をすれば、仕事は段々と上がって行く。また、自分が彫刻を覚え、一人前になったからといって、それで好いとはいわれぬ。自分が一家を為せば、また弟子をも丹精して、種子を蒔いて、自分の道を伝える所の候補者をこしらえよ。そして、立派な人物を自分の後に残すことをも考えなくてはならぬ。お前の身の上についてはさらにいうこともないが、これだけは技術のために特に話し置く」
こう東雲師は諄々と私に向って申されました。私は、いかにも御もっとものお話故、必ず師匠のお言葉を守って今後とも勉強致します旨を答えました。