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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

28 東雲師逝去のこと

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,252 字 · 9 页

青空文庫

しかし、店の仕事の方には私の兄弟子政吉もいること故、手が欠けるということはなく、従前通りやっておりました。

しかるに一夏を越して秋に這入っても、病気は段々と悪くなるばかり、一同の心配は一方ならぬわけでありました。それに華客場の中でも、師匠の家の内輪へまで這入っていろいろ師匠のためを思ってくれられた特別の華客先もありました中に、別して亀岡甚造氏の如きは非常に師匠のことをひいきにされた方でありましたが、この方が大変に心配をして、何んとか、もう一度癒してやりたいといっておられます。

この亀岡甚造という方は、その頃もはや年輩も六十以上の人で、当時は御用たしのようなことをしておられた有福な人でありました。若い時、彼のペルリの渡来時分、お台場の工事を引き受け、産を造ったのだそうで、この亀岡氏は先代の目がねによって亀岡家へ養子になったなかなか立派な人でありました。師匠とは気心も大変合っていて、内輪のことなどまで心配をされました。また同氏は私にもなかなかよくしてくれました。で、亀岡氏はじめ、我々、皆一同師匠の病気平癒を神仏かけて祈りましたが、どうも重くなるばかりであります。