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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,661 字 · 4 页

青空文庫

が、どうも、その土のことが気になってしようがありませんでした。

その後、或る日、工部学校の前を通り、ふと見ると、お濠へ白水が流れている。

「アア、これだ、これが石膏というものだな」と私は思いました。

それで、またその石膏が脂土と同じように私の憧れの種となりました。

さて、私はこうして一方には西洋彫刻のことに心を惹かれ、一方では自然の物象について独り研究しつつ、相更らず師匠の家に通って一家の生計をいそしんでいる中、前述の横浜貿易がこの一、二年間位の中に恐ろしい勢いで盛り出して来ました。

師匠の許へは米沢町の沢田という袋物屋から種々貿易向きの注文が来て、その方がなかなか多忙しくなる。今までは仏様専門であったが、今は不思議なものを彫る。たとえば、枝珊瑚樹を台にして、それに黒奴が大勢遊んでいるようなものを拵える。枝珊瑚の根の方を岩にして、周囲を怒り波と濤とを現わし、黒奴が珊瑚の枝に乗って喇叭を吹いているとか、陸に上がって衣物をしぼっているとか、遠見をしているとかいう形を作る。それは黒檀で彫るので、珊瑚の赤色には好くうつるので、外国人向きとしてなかなか評判よろしく能く売れるという。