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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
39 牙彫りを排し木彫りに固執したはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,763 字 · 6 页
布袋を彫ってくれ、というので、早速私は彫りはじめたが、この製作は、私がいろいろ西洋彫刻のことにあこがれ、実物写生によって研究努力した後の木彫りらしい木彫りであったから、私も長々研究の結果によって充分心行くような新しい手法をもって彫り試みたことであった。もっとも、図は布袋であるが、従来の仏師の仏臭を脱した一つの行き方をもってこの布袋を彫り上げたのであった。
そこで、沢田へそれを届けると、何金お礼をしたら好いかという。製作の日数の掛かっただけ一日一円という割にして私は報酬を貰い受けた。
その次は魚籃観音を一体、それから三聖人(三つ一組)を彫った。これらも実費だけを受け、決して余計な報酬を得ようとはしなかった。それで沢田は気の毒がって、
「それでは、手間が掛かる一方で、とてもお引き合いにはならんでしょう」という。
「いや、まずその日の生計が家業をこうしてやっていて行って行けるのだから文句もありません」
など答えると、沢田は、
「それは、そうでしょうが、あなたが、もし、象牙をおやりなさると、そりゃ、立派な手間が払えますのですが……こちらも商売ですから、見す見すあなたがお手数をかけて下すったものでも、木彫りでは儲けが薄いので、碌な手間をお払い出来ません。