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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
06 高村東雲の生い立ち
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,686 字 · 6 页
下谷七軒町酒井大学という大名の屋敷に奉行をしていた婦人で、女芸一通り能く出来(最も長唄がお得意であった)、東雲師の妻として、好い取り合わせでありました。それからまた間もなく、東雲師の店は浅草諏訪町へ転じました。これは森田町は往来広く空ッ風の強い日などは塵埃が甚くて、とても仕事が出来ないという有様なので、転居したのです。
まだ、その頃は硝子戸を入れる時代になっておりませんから、何処でも塵埃のためには困らされました(その頃、タシカ、神田のお玉ヶ池の佐羽という唐物屋がたった一軒硝子戸を入れていたもので、なかなか評判でありました。硝子器の壜は「ふらそこ」といって、桐の二重箱へなど入れて大切にした時代です)。私が東雲師の家に行ったのは、この諏訪町移転後三、四年のことだと思います。
店には私より以前に二人の弟子がいた。三枝松政吉と、覚太郎というものであった。二人とも、もはや相当に腕も出来てきた所から、もう一人小僧が欲しいというような訳で、例の床屋の安さんへ弟子を頼んだのが計らず私が行くことになったような順序になるのです。
私の行ったのは、文久三年亥年の三月十日の朝――安さんに伴れられて師匠に引き合わされました。