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へいわへのにやく

平和への荷役

宮本 百合子

「婦人公論」1948(昭和23)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,799 字 · 23 页

青空文庫

「一匹の軍馬よりもやすい兵卒の命」は雀躍して皇国に殉じることを名誉と感じて疑わないように。妻子父母は、国のために、不幸を名誉としてよろこばなければならない。宮様と同じ隊であった息子が、前線で戦死したことを息子の余栄として、皇后の巻かれた繃帯で、わが良人、わが子のもがれた手足がくるまれ、目しいた眼が包まれることで、日本の女性の苦悩と疑惑とが感涙によって洗い流されなければならなかった。恩賜の義足、恩賜の義手、何という惨酷な、矛盾錯倒した表現であろう。民草、または蒼生と、ひとりでに地面から生え、ひとりでに枯れてゆくもののような言葉でよばれた日本の幾千万の人民が、その命に何かの重大な価値を自覚する機会は、戦争という形でしか与えられなかった。

日本人は女でさえ、軍国的であり好戦的であるという前に、わたしたち今日の日本の心は、これまで日本を支配した権力と人民との関係の委細をことこまかに理解しなければならない。そして、以上のような人民の社会生活とその感情の現実を見出したとき、わたしたちは、これまで日本を絶対的な力で支配していた半封建的な天皇制というもののむごさを、あらためて痛感する。