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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
平林初之輔『平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕』。同一底本的分册已合并为一书。收入:或る探訪記者の話、探偵戯曲 仮面の男、オパール色の手紙、私はかうして死んだ!、祭の夜、秘密、華やかな罪過、動物園の一夜、誰が何故彼を殺したか。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 113,247 字 · 229 页
と私は変挺な初対面の婦人に対しては特に時期を失した、口のききかたをした。いったい私は崇高な感じに打たれると余計へまなことをいうフェータルなくせがある。
「まあ、どこのかたです? 若いお方?」
「ちょうど貴女と同じくらいですね。この横浜生まれの女です」
「妾もここの○○町の生まれなんですが、その方はまさか?……」
「その女もやっぱり○○町の十二番地の生まれなんですよ」
「……まあ随分ひどい方ね、お目にかかるすぐから、妾をからかいなさるなんて。雪子さんもずいぶんね。妾のことを番地までお話しなさるんですもの」
「いいえ、妾は何も申し上げやしませんよ。ね三浦さん。でも不思議ね、貴方はよく知っていらっしゃるのね。妾だって、みな子さんの番地などは忘れていたくらいですわ」
「いいえ、僕は、この方のことは何も知らないのです。ほんとうに深尾みな子という別の女を知っているのです。でも番地まで同じだとは思いませんでしたね。その女は地震で両親を失って、かわいそうな身の上なんですよ。この方とはまるで違うんです」
「だって深尾さんもやっぱり、地震でご両親を失ってかわいそうな身の上なんですよ」