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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
平林初之輔『平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕』。同一底本的分册已合并为一书。收入:或る探訪記者の話、探偵戯曲 仮面の男、オパール色の手紙、私はかうして死んだ!、祭の夜、秘密、華やかな罪過、動物園の一夜、誰が何故彼を殺したか。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 113,247 字 · 229 页
どなたです?
扉の外の声――新聞をもってまいりました。
東山は扉を開いて、一束の新聞を受けとる。
東山――有り難う。
扉をしめてもとの位置へかえり、新聞を卓子の上へ置く。
ああ吃驚した! ジキル博士はハイド君になると、すっかりもとの個性を失ったというが、俺には、面をかぶって仮面強盗になっている時でも、やはり、東山一雄の意識がはっきりつきまとっている。今の驚きようはどうだ! まるで何か悪いことをして、世を忍んでいる日陰者のような驚きかただ!
すると俺のやりかたはいったい間違っているんだろうか? 俺の復讐のしかたはまともの道をはずれているのじゃなかろうか? そうだ、この疑問が、俺を明け暮れ苦しめるんだ! 金のために苦しめられた人間が、金に復讐する! それが何で悪い? だが、俺の心はこの復讐で、一分間だって安らかだったことはない。どこか頭の奥の奥で、それは間違っていると囁くものがある。良心か? いや良心ではない。良心は満足している。芦田君は法律と言った。法律? 何だか俺の心を苦しめるのはそう言った物らしい。
だが世間の金持ちどもの言語の絶した狂態と、傍若無人な我儘とを見ると、俺の心の中の血が湧きかえるのだ。