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ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

山王祭の大像

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,946 字 · 34 页

青空文庫

御幣、太鼓、榊を先に立て、元和以来の古式に則って大伝馬町の諫鼓鶏の山車が第一番にゆく。行列長さだけで二十丁。山下門から日比谷の壕端に沿い、桜田門の前から右へ永田町の梨の木坂をくだり、半蔵門から内廓へはいって将軍家の上覧を経、竹橋門を出て大手前へ。それから、日本橋を通って霊岸島まで練ってゆく。

今年は麹町の年番で、一丁目から十三丁目までの町家が御役になってこれが大変なはずみよう。毎年の猿の山車のほかに、年番附祭の例にならい、朝鮮人来朝の練物と、小山のような大きな白象の曳物を出すというので、これが江戸中の大評判。

毎年は出さず、年番に当った年だけ曳出す。

高さは四間、頭から尻尾までの長さが六間半。鼻の長さだけでも九尺余りある。

平河町の大経師、張抜拵物の名人、美濃清が二年がかりでこしらえたもの。

木枠籠胴に上質の日本紙を幾枚も水で貼り、その上へ膠でへちまをつけて形を整え、それを胡粉仕上げにしたもの。

享保十三年に渡来した象を細かいところまで見て置いたと見え、芭蕉の葉のような大きな耳から眼尻の皺、鼻の曲り、尾の垂れぐあいまで、さながら生きた象を見るよう。