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ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

山王祭の大像

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,946 字 · 34 页

青空文庫

「おお、出ッ尻か。この節ア、だいぶと、精が出るの」

近日俄か仕込みの同心言葉。気障っぽく尻上りにそう言って、袴の襞を掴みながらのっそりと起ち上る。

「この月は北番所の月番だが、何といっても消口をとったのは俺のほうが先き。気ぶっせいかも知れねえが、常式通り相調べということにしてもらおうか。知ってもいようが、平河町から麹町十三丁は、むかしの俺の縄張り。お前だって仁義ということを知っているだろう、なア、出ッ尻。……ききゃア、この頃、平賀源内という大山師を担ぎ出して、妙に、しゃくったような真似ばかりするが、あんまり方図もなくのさばると、いずれ、いい眼は見ねえぜ。なア、出ッ尻、気をつけるほうがいいや、出ッ尻」

出ッ尻を売りに来やしめえし、出ッ尻、出ッ尻と気障な野郎だと思ったが、どうせ成上りの俄か同心、こんな馬鹿と正面切って渡合うほどのこともあるまいと、そこは、さすがに蜀山人太田南畝先生の弟子だけあって、多少気が練れている。あざとく絡んでくるのを、軽くいなして、伝兵衛、

「誰かと思ったら、これは戸田先生。先に手がつけば、相調べになることは昔からのきまり。そのご挨拶には及びませんのさ。