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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
萩寺の女
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,159 字 · 39 页
路考は、首を垂れてワナワナと肩を慄わせながら、
「はい、それは、只今もうしあげました」
「おお、そうか。そういうわけなら、浜村屋、気の毒だが、一緒に番屋まで行ってもらおうか」
路考は、伝兵衛に腕を執られながら、花が崩れるように痛々しく身を揉んで、
「どうぞ、お待ち下さいまし」
哀れなようすで伝兵衛の顔を見上げながら、
「なるほど、この手紙はあちきが書きましたものに相違ござんせんけど、それは、もう、今から十年ほども前の話。あちきが若女形の巻頭にのぼり、『お染』や『無間の鐘』を勤めておりました頃の手紙……」
源内先生は驚いて、
「路考さん、それは本当か」
「なんであちきが嘘など申しましょう。お手先の方もおいでになっていられるので、その場のがれの嘘などついてみても、しょせん、益のないこと。決して、偽わりは申しません」
伝兵衛も呆気にとられて、路考の手を放し、
「今から十年も前というと、お蔦がようやく九つか十歳の頃。……先生、こりゃ妙なことになりました」
源内先生は、額をおさえて、
「こりゃ、いかんな」
一瓢は、すかさず、
「先生、そこで一句」
源内先生は、苦り切って、