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ねんまつのいちにち

年末の一日

芥川 竜之介

年末清晨,作家从梦中醒来,面对一堆未完成的工作,感到疲惫和压力。朋友来访,琐事不断,这个寻常一天藏着怎样的无奈?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,979 字 · 7 页

青空文庫

けれどもお墓は見当らなかった。のみならず僕の見覚えていた幾つかの空き地さえ見当らなかった。

「聞いて見る人もなし、………困りましたね。」

僕はこう言うK君の言葉にはっきり冷笑に近いものを感じた。しかし教えると言った手前、腹を立てる訣にも行かなかった。

僕等はやむを得ず大銀杏を目当てにもう一度横みちへはいって行った。が、そこにもお墓はなかった。僕は勿論苛ら苛らして来た。しかしその底に潜んでいるのは妙に侘しい心もちだった。僕はいつか外套の下に僕自身の体温を感じながら、前にもこう言う心もちを知っていたことを思い出した。それは僕の少年時代に或餓鬼大将にいじめられ、しかも泣かずに我慢して家へ帰った時の心もちだった。

何度も同じ小みちに出入した後、僕は古樒を焚いていた墓地掃除の女に途を教わり、大きい先生のお墓の前へやっとK君をつれて行った。

お墓はこの前に見た時よりもずっと古びを加えていた。おまけにお墓のまわりの土もずっと霜に荒されていた。それは九日に手向けたらしい寒菊や南天の束の外に何か親しみの持てないものだった。K君はわざわざ外套を脱ぎ、丁寧にお墓へお時宜をした。