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こうふくについて

幸福について

宮本 百合子

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,007 字 · 18 页

青空文庫

て来たのであります。

ギリシャ神話の中にプロメシュースの神話というのがあります。これは、火の起源の話ですが、プロメシュースという若者が人間の生活に火が必要だと考え、天上の神様の火を盗んでまいりました。人間が火を得たということは人間の社会の発達のために、大きな歴史であったわけですが、それを、ギリシャ神話では、プロメシュースが火を盗んで来たという具合に話しているわけです。

このプロメシュースの話は、私たちにとって興味もあるし、昔から沢山の芸術の材料になっております。

しかし、これは、伝説でありまして、実際は、木の枝が風にこすられて、火が出るのを人間が発見し、その火を葉っぱに移して、だんだん自分の生活の中にいれて、それまでは、生で食べていた物をだんだん焼いたり、煮たりして食べることを知ったのであります。

人間がまず幸福を求めはじめたとき、自然と闘って、自分たちの生活を、より棲みよく工夫してきたということ。その次の段階には、生活の様式が変化するにしたがって、いままでの権力の存在が邪魔なものとなり、その権力との闘いがさけがたく起って来ている、ということがわかるのであります。