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こううんのてがみのよりどころ

幸運の手紙のよりどころ

宮本 百合子

「日本学芸新聞」1939(昭和14)年8月20日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,043 字 · 3 页

青空文庫

幸運の手紙は、従って人々がともかく幸福らしいものをたっぷりもって暮している世情の中では、効力を余り発揮しない。幸福や幸運というものがいかにもぼんやり遠くにあって、今日の現実とは反対のものとして心に描かれているような社会の条件のなかでこそ、幸運の手紙はその循環を全うし得るのではなかろうか。

地球を七巻き巻くとかいう云いかたも執念めいた響きを添える。七巻きとか七巻き半とかいう表現は、仏教の七生までも云々という言葉とともに、あることがらを自分の目前から追い払ってもまだそれはおしまいになったわけではないぞよ、という脅嚇を含んでいる。自分たちの棲んでいる地球を天界の外から見た人はないのだから、そういう地球を七巻きまくと云えば、気味悪い脈々とした連続をも感じさせよう。

今度は幸運の手紙を貰った人が警察に届けたということもあったようである。そんな手紙を貰って、しんから薄気味わるく思う顔付も想像され、それを届けて警察にもって行く姿というのも、市民的な感情の道をよくあらわしていると思う。そして何となく、そこにあわれのこもったユーモアもある。そうして、幸運の手紙を廻り出させる世の中のありようを保管しておく紙袋はどこにあるとも思えないのだろう。