轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
松本泰『幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:日蔭の街、P丘の殺人事件。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,797 字 · 107 页
彼は閉切った部屋の中を往ったり来たりしていたが、耐えられなくなって家を出た。
彼は何処をどう歩いたか、知らぬ間にもとの町へ出て了った。日頃行きつけのベルジアン・カフェで食事を済すと、またコックス家を訪ずれた。
窓という窓は真暗で、只ホールの上の電燈だけが、扉の上の硝子板に明るく映っている。家中は不在であった。
「奥様は先程一寸お帰りになりましたが、また直ぐ外出なさいました。お嬢様はお嬢様で、私が買物に行っている間に、置手紙をして何処かへお出掛になって、まだお戻りになりませんのですよ」女中は不安らしくオドオドした様子で、ビアトレスの書残した紙片を坂口に見せた。
彼はホールの電燈の下で、鉛筆の走り書を読んだ。すると突然、ホールの蔭で物音がした。
二人は吃驚して振返った。電話機の横手に吊した、籠の中で、鸚鵡が羽ばたきをしたのである。
「まア、どうしたのでしょう。ゴタゴタしていたものだから、私はすっかり鸚鵡の始末を忘れていたよ」女中は独言をいいながら、帽子掛のついた鏡の前に置いてある鳥籠の覆布を持ってきた。
「本統にお嬢様は何処へ行きなすったのだろう、手紙では奥様と御一緒のようでしたが……」