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おさなきひ

幼き日

小川 未明

「少年倶楽部」1929(昭和4)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,784 字 · 8 页

青空文庫

「吉雄さん、正ちゃんは、病気で寝ているのですよ。昨夜、すこしも眠らなかったので、いまになってからつかれて、眠ったのですけれど、外がやかましいので、目をさましはしないかと、小母さんは心配しているのですよ。」といいました。

吉雄さんは、正ちゃんが病気になったと聞くと、びっくりしました。そして、かわいそうでならなかったのです。

「小母さん、たいへんに悪いの?」と、心配して、たずねました。

「お医者さまにかかっているから、じきになおりますよ。だけど、熱が高いから、よく眠らせなければならないの。よく眠ると、熱が下がるのだから、よくなったら、また、遊んでやってくださいね。」と、お母さんは、いいました。

吉雄さんは、だまって、うなずきました。

このとき、子供たちが、わいわい叫んで、四、五人こちらへ駆けてきました。

「吉雄さん、遊ぼう!」と、一人は、元気よく呼びかけました。しかし、吉雄さんは、その言葉には、耳もかさずに、

「正ちゃんが病気なんだから、あっちへいっておくれ。」と、みんなに向かっていいました。

それから、吉雄さんは、正ちゃんの家の前に立っていました。あのかたことまじりにものをいう、りんごのように紅いほおをした、かわいらしい正ちゃんが病気で悩んでいると知ると、正ちゃんのお母さんといっしょになって、正ちゃんの眠りを守っ