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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
久坂葉子『幾度目かの最期』。同一底本的分册已合并为一书。收入:幾度目かの最期、女、鋏と布と型、四年のあいだのこと。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 页
こんな生活を一体いつまで続けるのだ。何というナンセンスな。彼は結婚している。そして私よりはなれてしまっているのだ。私の頭の中に彼は在るのだけれど、彼の中に一日だに私は存在することがあろうか。
そして日月はやっとのことで私を彼からひきはなした。別に新たに恋をしたわけでもなく、唯、恋だとか愛だとかそんなことをすべて否定しつづけたのだ。世の中は打算で行くんだ。勘定で生きるんだ。私はそうしてそんな時、偶然に起った縁談を一も二もなく承諾した。金持である。風采が立派で将来は渡米するという。私は相手に、感覚的なものを求めようとか愛情がなければ駄目だとか理解しあわなきゃとかいうことを全くのぞんでいなかった。たまに友達等がそんな希望を私に語ると一蹴してそれを笑い、自分の考えを得意にさえ思っていた。職業をはなれ花嫁修業に入ったところで、それが私を満足させる筈はなかった。けれども私には未来の設計をたてる喜びもなく、唯、菜っ葉をきざみ、箒を持って毎日を送った。今の生活は良いのだとも悪いのだとも思わない。考えることもない。笑いもなければ、涙もない。音楽もないし、色彩のない日の連続だった。