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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

久坂葉子『幾度目かの最期』。同一底本的分册已合并为一书。收入:幾度目かの最期、女、鋏と布と型、四年のあいだのこと。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 页

青空文庫

そして、駅の近くへのみに行ったのです。小母様。私はその時からのことを、克明に記憶してます。でも克明に書くだけの心のゆとりをもっちゃいません。あまりにもその出来事は、今から近いところにあるんだし。でも、出来るだけ忠実にかきましょう。彼は、笑顔もみせないでのみ、私に話かけるよりも、店の女に喋っていました。私はでも、一しょにいるということで嬉しいでした。そのことだけでもよかったのです。ところが随分のみ出した彼は、私にむかって、又嫌味のようなことを云い出しました。

「俺が神戸で会った女の中で、お前は一番げのげのげだ」

その意味がききとれず、もう一度たしかめました。質の悪い女だそうです。そして、男の自虐は魅力だけど、女の自虐はみにくいと云いました。私は殆ど黙ってきいていました。彼は又、男にかしずかれて喜んでいる女性だとも私にむかって云うのです。それはおよそけんとうはずれな彼の解釈でした。小母様。私はそんな女かしら。まだかしずかれたことはないんだけど。私はかしずかれようとさえ、思わない。私はいつも愛されるより愛す立場の女ですし、ほんとにどうして、彼がそんなことを云うのか、私わからない。