轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひろば

広場

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页

青空文庫

これも、今おこっている問題と連関をもっていた。朝子としては、仕事そのものより、自分の誠意の問題として大事に考える種類のことなのであった。

突っぱねられて、朝子は悲しい顔をした。そういう態度で素子が自分の個性にだけ立てこもって二人の距離をひらいてゆくようなのが、朝子にはこわくてまた悲しいのであった。それなり暫く朝子は傍に佇んでいたが、やがて自分の机へ引かえした。到頭、そんなことを云わないで、という言葉が朝子の口を出得なかった。今度の問題は、素子がそれほど恣意的に振舞う筈のものだろうか。そういう素子を隔たった眼で眺める心が、朝子のうちにもかき立てられた。

窓の外に視線をやって頬杖をついていたら、顔をこっち迄現わさないで、素子が新版の大きい辞典を机のはじへ突き出してよこした。

「それを見れば大抵のものはある――」

朝子は無言でしずかにそれを自分のよこへ置き直した。

自分の心のうちの動揺を整理してゆく手がかりにも思えて、朝子は一心に誰の助けもかりずその仕事をつづけているのであった。

その間にも素子は、二人が帰国の準備として立てていた計画を決して変えようとせず、躊躇したり見合わせたりせず、今は、どっちみち自分は帰るんだからと押し出したテンポで着々すすめて行った。