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ひろば
広場
宮本 百合子
「文芸」1940(昭和15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页
カーテンのない大きい窓からは二重ガラス越しにすぐ前の新聞社の建物の屋上が見えていて、正面のイルミネーションの余光がぼんやり夜空を赤くしているのが寝台からも見える。室内の家具はその不確な外光をうけて、黒くうずくまっている。
三年前ここへ二人が着いたばかりの夜も、カーテンのない窓から、朝子は永いことそとを眺めていた。あのときはこの新聞社の建物の巨大なガラス張りの円天井が廃墟で、その破れと骸骨のような鉄骨の間に霏々と雪が降りかかって消えこむ様子は昼間見ていると一層寂しい眺望であった。
今またこの部屋に臥ていて、朝子は何とも云えない思いで城壁の塔の時計が時を打つ音をきいた。この間うちから自分というものをしらべつくしたあげく、朝子は自分が本当にここで書きたいと思うようなものをかくためには、それに必要な日本での生活を知っていないことを、はっきり自分に認めたのであった。このことのうちに、ここでの生活で成長した自分が見られることは何というよろこばしさだろう。しかし、それはどこまでもここで朝子が身につけた成長の幾何かであって、朝子にとって実感のある日本は、三年前の生活の映像であり、それは保の短い生涯を終らせ、朝子をここへ送った潮ではあったが、朝子としては直接何もふれていない、その環外にあって、どちらかと云えば孤独に、平穏