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ひろば

広場

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页

青空文庫

と云った。

「どっちだって同じことさ」

そして再び机の方へ向き直りながら、

「どうでもあなたの考える通りにすればいいが、私は、あなたのおっ母さんたちに妙な云いわけ役をさせられることだけは真平御免だからね。それだけは前もっておことわりだから。帰らないんなら帰らないでいいから、はっきり手紙でも何でも書いといてもらおう」

ここで暮した三年を入れれば、朝子たちは六年ほど一緒に暮して来た。その年月のなかで二人の女はどっかで少しずつ少しずつちがったものになって来て、今さけがたい一つの岐点にぶつかった。そのぶつかり工合にも、何かめいめいの角度というようなものがあらそえない形で現れていることが痛切に感じられるのであった。

寝台の枕の上へ横になった顔を押しつけて考えこんでいるうちについとろりとした朝子は、やがて、

「御飯までにケラシン(炊事用石油)買って来とかなけりゃ駄目なんだろう」

と云っている素子のそっけない声で、びっくりして起き直った。素子はわざとこっちに背を向けたまま、自分の声の素っ気なさを意識している調子で云っているのであった。

朝子は黙って立ち上って靴をはきかえ、衣裳戸棚をあけて太い麻糸でこしらえた買物袋をとり出した。