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ざゆうだいいっぴん
座右第一品
上村 松園
「大毎美術 第十巻第六号」1931(昭和6)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,182 字 · 7 页
そうしては博物館に通い、時折の売立会を見に行きして、これはと思うものを縮図して居りました。それが集まったこの帳面なのです。立派に装釘された金目な参考資料などは、一、二度翻えして見ては居ましても記憶にも止まっていないものもあります。ですが私の縮図帳には其の時その時の涙が織り込まれ感奮が描き込まれているわけでございますから、忘れようとしても忘れられぬ思い出があるのです。
売立の会
その頃は売立の会などにしましても、今日ほど繁々あるわけでもありませず、時折祇園の栂の尾辺で小規模に催されるくらいでした。したがってそんな会は私にとっては大切な修業場でした。私は矢立を持っては絵の前に坐り込んで写しました。若さと熱心さがさせることではありますが、朝から坐り込んで晩までお昼の御飯を抜いて描きつづけたことも度々あります。
売立の会のことですから、都合によっては掛け換えられないでもありませぬし、もし昼飯に立ったりしていて掛け換わりでもしては写し損ねますので、坐り込んでしまったわけなのでしたが、その頃は今のようにそうした場所で縮図などしているような人もありませず、それに何処のなんという女子やら、誰も知った人もない名もない頃の私なのですから「アッ又来やはった」