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ゆみまちより

弓町より

石川 啄木

「東京毎日新聞」1909(明治42)年11月30日、12月2日~7日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,684 字 · 18 页

青空文庫

そうして私は、私自身現在の諸詩人の詩に満足するか否かをいう代りに、次の事をいいたい。――諸君のまじめな研究は外国語の知識に乏しい私の羨やみかつ敬服するところではあるが、諸君はその研究から利益とともにある禍いを受けているようなことはないか。かりにもし、ドイツ人は飲料水の代りに麦酒を飲むそうだから我々もそうしようというようなこと……とまではむろんいくまいが、些少でもそれに類したことがあっては諸君の不名誉ではあるまいか。もっと卒直にいえば、諸君は諸君の詩に関する知識の日に日に進むとともに、その知識の上にある偶像を拵え上げて、現在の日本を了解することを閑却しつつあるようなことはないか。両足を地面に着けることを忘れてはいないか。

また諸君は、詩を詩として新らしいものにしようということに熱心なるあまり、自己および自己の生活を改善するという一大事を閑却してはいないか。換言すれば、諸君のかつて排斥したところの詩人の堕落をふたたび繰返さんとしつつあるようなことはないか。

諸君は諸君の机上を飾っている美しい詩集の幾冊を焼き捨てて、諸君の企てた新運動の初期の心持に立還ってみる必要はないか。