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ゆみまちより
弓町より
石川 啄木
「東京毎日新聞」1909(明治42)年11月30日、12月2日~7日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,684 字 · 18 页
――そのころの詩というものは、誰も知るように、空想と幼稚な音楽と、それから微弱な宗教的要素(ないしはそれに類した要素)のほかには、因襲的な感情のあるばかりであった。自分でそのころの詩作上の態度を振返ってみて、一ついいたいことがある。それは、実感を詩に歌うまでには、ずいぶん煩瑣な手続を要したということである。たとえば、ちょっとした空地に高さ一丈ぐらいの木が立っていて、それに日があたっているのを見てある感じを得たとすれば、空地を広野にし、木を大木にし、日を朝日か夕日にし、のみならず、それを見た自分自身を、詩人にし、旅人にし、若き愁いある人にした上でなければ、その感じが当時の詩の調子に合わず、また自分でも満足することができなかった。
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二三年経った。私がその手続にだんだん慣れてきた時は、同時に私がそんな手続を煩わしく思うようになった時であった。そうしてそのころのいわゆる「興の湧いた時」には書けなくって、かえって自分で自分を軽蔑するような心持の時か、雑誌の締切という実際上の事情に迫られた時でなければ、詩が作れぬというような奇妙なことになってしまった。