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ゆみまちより

弓町より

石川 啄木

「東京毎日新聞」1909(明治42)年11月30日、12月2日~7日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,684 字 · 18 页

青空文庫

と、現在考えている「詩」とは非常に違ったものであるのはむろんである。

二十歳の時、私の境遇には非常な変動が起った。郷里に帰るということと結婚という事件とともに、何の財産なき一家の糊口の責任というものが一時に私の上に落ちてきた。そうして私は、その変動に対して何の方針もきめることができなかった。およそその後今日までに私の享けた苦痛というものは、すべての空想家――責任に対する極度の卑怯者の、当然一度は受けねばならぬ性質のものであった。そうしてことに私のように、詩を作るということとそれに関聯した憐れなプライドのほかには、何の技能ももっていない者においていっそう強く享けねばならぬものであった。

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詩を書いていた時分に対する回想は、未練から哀傷となり、哀傷から自嘲となった。人の詩を読む興味もまったく失われた。眼を瞑ったようなつもりで生活というものの中へ深入りしていく気持は、時としてちょうど痒い腫物を自分でメスを執って切開するような快感を伴うこともあった。また時として登りかけた坂から、腰に縄をつけられて後ざまに引き下されるようにも思われた。