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ひかれていくうし

引かれていく牛

小川 未明

「こくみん三年生」1941(昭和16)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,674 字 · 4 页

青空文庫

「かわいそうに。」と、心に思ったのです。

子供たちが、自分に同情してくれることも知らずに、牛は、のそり、のそりと歩いていきました。そして、いかにも、歩くのがいやそうに見えました。牛を引く男は、日が暮れてしまうのが気にかかるので牛を急がせようと、なわのはしで、ピシリと牛のしりをたたきました。すると、牛は、はっとして、そのときは歩みを早めたが、またいつのまにか、のそり、のそりとなるのでした。

「歩いていくのがいやなんだね。」と、勇ちゃんが、いいました。

「そうよ、きっと殺す場所へ引れていかれるのを知っているのよ。」と、よし子さんが、いいました。

「そうじゃないだろう。」と、孝ちゃんが強くうちけしました。

「いえ、いつか、ああして牛が連れていかれるのを見たとき、兄さんが、そういったわ。」と、よし子さんがいいました。

「かわいそうだな。」と、勇ちゃんと年ちゃんが、大きな声で、いっしょにさけびました。

いつしか牛の姿は、だんだん遠くなってしまいました。みんなは、牛が見えなくなるまで、その方を見送っていましたが、二度とたのしく遊ぶ気にはなれませんでした。

「ほんとうに、牛は知っているんだね。