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でしのこころ

弟子の心

宮本 百合子

「新家庭」1923(大正12)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,926 字 · 8 页

青空文庫

と云う意味の小言を云われた。皆の心には、ぴんと、響くものがあった。

翌日、さすがにそのひとは、水色襷をかけなかった。けれども、とても捨てかねたのだろう。四五日置きに、遠慮ぶかく、水色の襷が、動く手や頭の間にチラチラ見えた。(この愛らしい娘心の持ち主は、卒業後間もなく結婚して、死んでしまった。先生は勿論、此事を、此をよまれる迄御存知なかったろう。一体、生徒との、他から注目されるようないきさつは、全く好まれなかったのだから)

最近になって、私は久しく先生におめにかからない。先生の思想もお変りになったろう。自分の人生の見かたにも変化が起った。

けれども、いろいろのことから、一箇の人とし、女性とし、先生に持つ心は、以前にまさるとも劣らない。わたくしが、あまり頻繁におめにかかれないのも、互方いそがしいと云うばかりでなく、今迄とまるで違った分子が、先生に対する感情のうちに入ったので、それを、どうくだいて、楽に現してよいか、変なきまりのわるさがあると云うこともある。

時に、憂鬱になるほど、私は先生と、先生の圏境とを思うことがある。

先生の忍耐強さ、他を傷ることを飽くまで避けられる性質、思慮の細かさ、其れ等が却って先生の身を食うようなことがありはしないだろうか。