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いようへん
影を踏まれた女
岡本 綺堂
岡本綺堂『影を踏まれた女』。同一底本的分册已合并为一书。收入:異妖編、月の夜がたり。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,110 字 · 46 页
なんだ、つまらないといったような僕の顔をみて、梶井はさらに説明した。
「君も知っているだろう。僕の庭の隅に、大きい欅が二本立っていて、その周りにはいろいろの雑木が藪のように生い茂っている。その欅の下に小さい稲荷の社がある。」
「むむ、知っている。よほど古い。もう半分ほど毀れかかっている社だろう。あの縁の下から蛇が出たのか。」
「三尺ぐらいの灰色のような蛇だ。」
「三尺ぐらい……。小さいじゃないか。」と、僕はまた笑った。「ここらには一間ぐらいのがたくさんいるよ。」
「いや、蛇ばかりじゃないんだ。まあ、早く来て見たまえ。」
梶井がしきりに催促するので、僕も何事かと思ってついて行くと、広い庭には草が荒れて、雑木や灌木がまったく藪のように生い茂っている。その庭の隅の大きい欅の下に十人あまりの植木屋があつまって、何かわやわや騒いでいた。梶井の父も庭下駄をはいて立っていた。
この社は、前の持主の時代からここに祭られてあったのだが、もう大変にいたんでいるのと、新しい持主は稲荷さまなどというものに対してちっとも尊敬心を抱いていないのとで、庭の手入れをするついでに取毀すことになった。