轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かれはだれをころしたか

彼は誰を殺したか

浜尾 四郎

「文藝春秋」1930(昭和5)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,147 字 · 27 页

青空文庫

警察からは直ちに係官が出張した。東京から家族の者もかけつけた。

けれどもそこには何ら他殺の疑いをかけるべき点もなく又自殺と見られる所もなかった。中条直一が相当地位ある某省役人であることが凡ての嫌疑から彼を救った。

かくして吉田豊は、前途有為の身を以て、T海岸で不慮の過失死をとげたということが一般に報ぜられたのである。

二

中条直一は然し其の後、だんだん憂鬱になって行った。そうしてその秋には極度の神経衰弱にかかって、当分役所を休まなければならなくなった。

同じ家に居ながら彼は、綾子とは一日中一言も口をきかぬことすら多くなった。

綾子は綾子でピアノを盛んに独りで弾じた。而も相手がないのに、ヴァイオリンやヴァイオリンコンツェルトのピアノのパートを、やけに弾ずることが多かった。

彼女のこの振まいは、必ずしも夫に対するあてつけばかりではなかったらしい。

こんな時に、夫の直一はますます陰気になって行った。

ついに、医者の注意によって毎朝ある一定の時間を散歩に費やさなければならないと云うことになって、永田町の自宅から徒歩で日比谷公園を一周して来ることにした。