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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

受朋友之托调查一个神秘女子的过去,却一步步走进她背后复杂的情感世界,真相远比你想象的更耐人寻味。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 页

青空文庫

顔を出す機会も起らなかった。ただ長い間同じ下宿に立籠っているという縁故だか同情だかが本で、いつの間にか挨拶をしたり世間話をする仲になったまでである。

だから敬太郎の森本に対する好奇心というのは、現在の彼にあると云うよりも、むしろ過去の彼にあると云った方が適当かも知れない。敬太郎はいつか森本の口から、彼が歴乎とした一家の主人公であった時分の話を聞いた。彼の女房の話も聞いた。二人の間にできた子供の死んだ話も聞いた。「餓鬼が死んでくれたんで、まあ助かったようなもんでさあ。山神の祟には実際恐れを作していたんですからね」と云った彼の言葉を、敬太郎はいまだに覚えている。その時しかも山神が分らなくって、何だと聞き返したら、山の神の漢語じゃありませんかと教えられたおかしさまでまだ記憶に残っている。それらを思い出しても、敬太郎から見ると、すべて森本の過去には一種ロマンスの臭が、箒星の尻尾のようにぼうっとおっかぶさって怪しい光を放っている。

女についてできたとか切れたとかいう逸話以外に、彼はまたさまざまな冒険譚の主人公であった。まだ海豹島へ行って膃肭臍は打っていないようであるが、北海道のどこかで鮭を漁って儲けた事はたしかであるらしい。