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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

受朋友之托调查一个神秘女子的过去,却一步步走进她背后复杂的情感世界,真相远比你想象的更耐人寻味。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 页

青空文庫

僕は暑中に似合わしい閑事業として、なるべく時間のかかるように、気が向けば手にした本をいつまでも読み耽ってみようという気楽な方針で蝸牛のごとく進行した。作は時ならない払塵の音を聞きつけて、梯子段から銀杏返しの頭を出した。僕は彼女に書架の一部を雑巾で拭いて貰った。しかしいつまでかかるか分らない仕事の手伝を、済むまでさせるのも気の毒だと思って、すぐ階下へ下げた。僕は一時間ほど書物を伏せたり立てたりして少し草臥れたから煙草を吹かして休んでいると、作がまた梯子段から顔を出した。そうして、私でよろしければ何ぞ致しましょうかと尋ねた。僕は作に何かさせてやりたかった。不幸にして西洋文字の読めない彼女には手の出せない書物の整理なので、僕は気の毒だけれども、なに好いよと断ってまた下へ追いやった。

作の事をそう一々云う必要もないが、つい前からの関係で、彼女のその時の行動を覚えていたから話したのである。僕は一本の巻煙草を呑み切った後でまた整理にかかった。今度は作のためにわれ一人の世界を妨たげられる虞なしに、書架の二段目を一気に片づけた。その時僕は久しく友達に借りて、つい返すのを忘れていた妙な書物を、偶然棚の後から発見した。