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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

受朋友之托调查一个神秘女子的过去,却一步步走进她背后复杂的情感世界,真相远比你想象的更耐人寻味。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 页

青空文庫

彼は遺憾な顔をして彼女の名前を聞いた。幸にして僕は御弓という古風な名を忘れずにいた。彼は次に死んだ時の彼女の年齢を問うた。僕はその点に関して、何という確とした知識を有っていなかった。彼は最後に、彼の宅に奉公していた時分の彼女に会った事があるかと尋ねた。僕はあると答えた。彼はどんな女だと聞き返した。気の毒にも僕の記憶はすこぶる朦朧としていた。事実僕はその当時十五六の少年に過ぎなかったのである。

「何でも島田に結ってた事がある」

このくらいよりほかに要領を得た返事は一つもできないので、僕もはなはだ残念に思った。市蔵はようやく諦らめたという眼つきをして、一番しまいに、「じゃせめて寺だけ教えてくれませんか。母がどこへ埋っているんだか、それだけでも知っておきたいと思いますから」と云った。けれども御弓の菩提所を僕が知ろうはずがなかった。僕は呻吟しながら、已を得なければ姉に聞くよりほかに仕方あるまいと答えた。

「御母さんよりほかに知ってるものは無いでしょうか」

「まああるまいね」

「じゃ分らないでもよござんす」

僕は市蔵に対して気の毒なようなまたすまないような心持がした。