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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

受朋友之托调查一个神秘女子的过去,却一步步走进她背后复杂的情感世界,真相远比你想象的更耐人寻味。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 页

青空文庫

敬太郎は「どうもありがとう。じゃなるべく早く行くようにするから」と礼を述べて電話を切ったが、どうせ行くなら今夜にでも行って見ようという気が起ったので、再び三階へ取って返してこの間拵らえたセルの袴を穿いた上、いよいよ表へ出た。

曲り角へ来てポストへ手紙を入れる事は忘れなかったけれども、肝心の森本の安否はこの時すでに敬太郎の胸に、ただ微かな火気を残すのみであった。それでも状袋が郵便函の口を滑って、すとんと底へ落ちた時は、受取人の一週間以内に封を披く様を想見して、満更悪い心持もしまいと思った。

それから電車へ乗るまではただ一直線にすたすた歩いた。考も一直線に内幸町の方を向いていたが、電車が明神下へ出る時分、何気なく今しがた電話口で須永から聞いた言葉を、頭の内で繰り返して見ると、覚えずはっと思うところが出て来た。須永は「今日内幸町からイトコが来て」とたしかに云ったが、そのイトコが彼の叔父さんの子である事は疑うまでもない。しかしその子が男であるか女であるかは不完全な日本語のまるで関係しないところである。

「どっちだろう」

敬太郎は突然気にし始めた。もしそれが男だとすれば、あの後姿の女についての手がかりにはならない。